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東京地方裁判所 平成8年(ワ)10494号 判決

原告 日本レジャーカードシステム株式会社

右代表者代表取締役 赤倉啓之

右訴訟代理人弁護士 梶谷剛

同 岡正晶

同 和智洋子

同 井上裕明

右訴訟復代理人弁護士 藤原寛

被告 株式会社モリヤ

右代表者代表取締役 守矢文雄

被告 守矢文雄

被告 守矢幸平

被告 守矢芳幸

右被告四名訴訟代理人弁護士 御園廣實

被告 高田修詞

右訴訟代理人弁護士 縄田政幸

被告 稲垣幸弘

右訴訟代理人弁護士 大脇保彦

同 鷲見弘

同 相羽洋一

同 谷口優

同 原田彰好

同 杉山修治

同 神谷明文

同 園田理

被告 伊藤元

被告 小澤美香

主文

一  被告株式会社モリヤは、原告に対し、金二億五〇〇〇万円及びこれに対する平成八年六月二八日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

二  被告守矢文雅、同守矢幸平、同守矢芳幸、同高田修詞、同稲垣幸弘、同伊藤元及び同小澤美香は、原告に対し、各自金二億五〇〇〇万円及びこれに対する平成八年九月二日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、被告らの負担とする。

五  この判決は、第一項及び第二項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告株式会社モリヤは、原告に対し、二億五〇〇〇万円及びこれに対する平成八年二月八日から支払済みまで年一四パーセントの割合による金員を支払え。

二  被告守矢文雄、同守矢幸平、同守矢芳幸、同高田修詞、同稲垣幸弘、同伊藤元及び同小澤美香は、原告に対し、各自二億五〇〇〇万円及びこれに対する平成八年二月八日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、プリペイドカードを発行して、これを加盟店契約を締結したパチンコ店に提供すること等を目的とする原告が、加盟店であるパチンコ店において店ぐるみで右契約に反した変造カードを使用するなどして原告に損害を与えたとして、パチンコ店に対し債務不履行に基づき、パチンコ店の経営者及び従業員に対し不法行為に基づき、右損害の賠償を請求している事案である。

一  前提事実

以下の事実のうち、末尾に証拠等を挙げた部分は当該証拠等により認められ、その余は当事者間に争いがない。

1  当事者等

(一) 原告は、プリペイドカードの発行及びカードシステムに関する企画等を主たる目的とする株式会社である。

(二) 被告株式会社モリヤ(以下「被告会社」という。)は、遊技場の経営を主たる目的とする株式会社である。

被告会社は、パチンコ店であるニューコンコルド長地店(平成五年七月二七日開店。以下「長地店」という。)、コンコルド岡谷店(同月以前に開店。以下「岡谷店」という。)、コンコルド塩尻店(同月以前に開店。以下「塩尻店」という。)及びニューコンコルド諏訪インター店(平成七年一二月一二日開店。以下「諏訪インター店」という。)を経営していた(以下、長地店、岡谷店、塩尻店及び諏訪インター店を合わせて「本件各店舗」という。)。

被告守矢文雄(以下「被告文雄」という。)は被告会社の代表取締役、被告守矢幸平(以下「被告幸平」という。)は被告文雄の長男で被告会社の専務取締役、被告守矢芳幸(以下「被告芳幸」という。)は被告文雄の二男で被告会社の常務取締役である。

(三)(1)  被告高田修詞(以下「被告高田」という。)、被告伊藤元(以下「被告伊藤」という。)及び被告小澤美香(以下「被告小澤」という。)は、いずれも本件当時被告会社の従業員であり、左記の地位にあった者である。

ア 被告高田 本件各店舗の営業企画部長

イ 被告伊藤 諏訪インター店主任

ウ 被告小澤 長地店副主任

(2)  右(1) の被告らのほかに、本件当時、被告各店舗において左記の従業員が勤務していた。

ア 長地店

・店長 田中義隆(以下「田中」という。)

・主任 都築孝(以下「都築」という。)

イ 岡谷店

・店長 平成七年一二月まで 米田智紀(以下「米田」という。)

右同月から 中嶋正樹(以下「中嶋」という。)

・主任 平成七年一二月まで 中嶋

ウ 塩尻店

・店長 山本元

・主任 久保敏秀

エ 諏訪インター店

・店長 米田

・班長 米田桂子(旧姓原。以下「桂子」という。)

(四) 被告稲垣幸弘(以下「被告稲垣」という。)は、遊技機メーカーである株式会社三共名古屋支店の営業課長であった者である。

(弁論の全趣旨)

2  本件システムの仕組み

(一) 原告は、パッキーカードという名称のパチンコ遊技向けのプリペイドカード(以下「本件カード」という。)を発行し、本件カードにより遊技や附随サービスの利用代金の決済等を行うプリペードカードシステム(以下「本件システム」という。)を開発し、加盟店契約を締結した遊技場にこれを提供している。

本件システムは、パチンコ店における玉貸しを本件カードによって行い、貸した玉の量を本件カードの消費量として計上し、その情報をパチンコ店に設置されたコンピューターに送信し、更に右情報を電話回線によって原告に送信することによって、原告が加盟店に代わって売上げの集計等の決済事務等を行うというものである。

(二) 本件システムの具体的な仕組みは、次のとおりである。

原告は、遊技店を経営する会社との間で、本件カードの取扱いに関してプリペイドカードシステム加盟店契約を締結し、加盟店に対し、一定割合のカード価格を加算した価額で、本件カードを販売する。

加盟店は、顧客に対し、各店舗に設置した券売機を通じて本件カードを販売する。本件カードを購入した顧客は、パチンコ台に設置されたカード式玉貸機(カードユニット)に本件カードを挿入し、店舗から必要量のパチンコ玉を借りて、遊技を行う。使用された本件カードには、カードの券面に残高に応じた箇所にパンチ穴が開けられ、また、磁気情報部分に使用可能残高が記載されるため、使用済みの本件カードを玉貸機に挿入しても、パチンコ玉を借りることはできない。

各店舗において販売された本件カードの種類、枚数、客が使用した本件カードの消費高等の情報は、各店舗に設置されたターミナルボックスという名称のコンピューターに送信され、そこにおいて集計された情報が、電話回線を通じて原告のコンピューターに送信される。原告は、右情報に基づいて、加盟店の各店舗における本件カードの販売額及び消費額を算出する。

原告と加盟店との間の決算は、一定の期日に、本件カードの販売合計額と、加盟店の店舗で使用されたカードの消費合計額の差額によって精算する方法によって行われるのが一般である。

(甲一、弁論の全趣旨)

3  本件加盟店契約の締結

原告と被告会社は、平成五年七月一四日、プリペイドカードシステム加盟店契約(以下「本件加盟店契約」という。)を締結し、次のとおり合意した。

(一) 原告は、被告会社に対し、左記の五種類のカードを発行する。(一条)

PAQY CARD 10(一〇〇〇円相当)

PAQY CARD 20(二〇〇〇円相当)

PAQY CARD 30(三〇〇〇円相当)

PAQY CARD 50(五〇〇〇円相当)

PAQY CARD 100(一万円相当)

(二) 被告会社は、本件システムの加盟店として、本件カードの取扱いについて、本件加盟店契約の定めのほか、原告の定めるカード取扱規定及びパッキーカード利用約款の規約及び約款に従い、善良なる管理者の注意義務をもって誠実に業務を行う。(三条一項)

(三) 被告会社は、原告に対し、券面金額に生カード代及びエンコード費用等のカード製造原価(以下「本件製造原価」という。)を加算した金額を支払う。(七条四項)

(四) 原告と被告会社は、毎月一定日を基準日とし、被告会社の原告に対する本件カード代金の支払債務と、原告の被告会社に対する本件カード利用による売上代金の支払債務を、対当額でもって相殺の上、その差額を支払う方法により決済する。(一〇条)

(五) 原告と被告会社は、相互に、本件加盟店契約に基づく金銭債務の履行を怠ったときは、年一四パーセントの割合による遅延損害金を支払う。(一八条)

(甲一)

4  本件各店舗への本件システムの導入等

被告会社は、平成五年七月一四日長地店に、平成六年一一月一六日岡谷店に、同年一二月八日塩尻店に、平成七年一二月一二日諏訪インター店に、それぞれ本件システムを導入した。原告と被告会社は、本件カード一枚当たりの本件製造原価を、長地店については一五円(平成七年九月二〇日付けの合意後は一四円)、岡谷店、塩尻店及び諏訪インター店については一四円にする旨、それぞれ合意した。

原告は、ホストコンピューターという名称のコンピューターを設置して、本件各店舗に対して販売された本カードの種類及び枚数を入力し、また、被告会社から右コンピューターに対し、毎日、顧客が消費した本件カードの種類及び金額が送信される仕組みとなっていた。原告と被告会社は、毎月一定日において、原告がホストコンピューターにおいて把握している情報に基づき、被告会社の原告に対する本件カード代金の支払債務と、原告の被告会社に対する本件カード利用による売上代金の支払債務を、対当額でもって相殺の上、その差額を支払う方法により決済していた。

(甲一、二の一ないし五)

二  原告の主張

1  被告らは、店ぐるみで、本件カードを変造して、変造に係る本件カード(以下「変造カード」という。)を使用して、あたかも真正なカードが使用されたかのように原告を欺罔して、原告から右変造カードの使用相当額を支払わせ、原告から右金員を騙し取った。

2  本件カードの変造、使用行為

(一) 被告幸平と同高田は、平成六年一〇月ころ、本件カードを変造して使用することによって、原告から右使用代金の支払を受けるなどして不正に利益を得ることを企てた。右被告らは、被告文雄及び同芳幸に対し、本件カードを変造して使用することを伝え、その同意を得た。

被告高田は、同稲垣に対し、平成六年一〇月ころ、本件カードの変造機械(以下「本件変造機」という。)の入手方を依頼した。被告稲垣は、同高田らが変造機械を使用して、本件カードを変造し、使用するなどして原告に損害を与えることを知りながら、同被告らのために本件変造機を調達し、平成七年一月二〇日ころ、本件変造機を長地店に持参し、被告高田らに対し、代金八〇〇万円で売り渡した。

(二) 被告高田、同幸平、同文雄、同芳幸、同伊藤、同小澤、その他本件各店舗の従業員らは、共謀の上、岡谷店において平成七年二月一八日から平成八年二月八日まで、長地店において平成七年四月九日から平成八年二月八日まで、諏訪インター店において平成七年一二月一六日から平成八年二月八日まで、塩尻店において平成七年二月二八日から同年九月一七日までの間、本件変造機を用いて使用済みの本件カードの磁気情報を未使用の磁気情報に書き換え、変造カードを本件各店舗の玉貸機に挿入して使用し、変造カードによる架空の売上げを計上させ、その結果、変造カードをあたかも真正なカードとして使用したかのように原告を欺罔して、変造カードの消費相当額を原告に支払わせ、右金員を騙し取った。

(三) 仮に、被告文雄及び同芳幸が、本件変造機の購入に先立って、変造カードの使用についての共謀を行っていなかったとしても、同被告らは、その後、被告幸平から本件カードの変造及び変造カードの使用について報告を受け、変造カードによる架空売上げの計上を了承し、共同して不法行為を行った。

また、仮に、被告文雄及び同芳幸が、被告幸平から、本件カードの変造、行使について明示的な報告を受けていなかったとしても、被告文雄及び同芳幸は、本件カードの販売額と消費額との間に異常な程度の差額が生じていることを認識しており、本件各店舗の従業員が本件カードを変造して使用していることを認識し、これを黙認していた。

仮に、被告文雄及び同芳幸が、被告高田らが本件カードを変造して使用していることを認識していなかったとしても、本件カードの販売額と消費額との間の差額の発生等から、変造及び使用に気付くべきであり、気付かないことについて過失があった。

(四) 被告伊藤は、米田から指示を受け、平成七年一二月以降、諏訪インター店において、本件カードの変造、使用等を行った。

被告小澤は、都築から指示を受け、長地店において、平成七年二月以降、本件カードの変造、使用等を行った。

(五) 被告稲垣は、被告高田及び同幸平らに対し、平成七年一月二〇日ころ、本件変造機を八〇〇万円で売り渡し、その後も、本件変造機の初期不良や部品の摩耗のため、四回にわたって本件変造機を新しいものと交換した。被告稲垣が、右交換の都度、より性能の高いものを提供したため、本件各店舗における変造カードの作成及び使用の数量は著しく増大した。

3  被告らの責任

(一) 被告会社の債務不履行責任

被告会社は、本件システムの加盟店として、本件加盟店契約並びに原告の定めるカード利用約款その他の規定及び約款に従って善良なる管理者の注意義務をもって忠実に業務を行う義務を負っていた(本件加盟店契約三条一項)ところ、右2のとおり、被告会社の役員らが、共謀して本件カードの変造、使用等を行ったのであるから、右義務に違反したものであり、債務不履行責任を負う。

仮に、被告会社の役員らが本件カードの変造、使用を行わず、従業員らの監督につき過失がなかったとしても、被告会社は、履行補助者をして変造カードを使用させてはならない義務を負っていたところ、本件カードの変造、使用等を行った本件各店舗の従業員は被告会社の履行補助者であり、被告会社は債務不履行責任を負う。

(二) 被告会社以外の被告らの不法行為責任

(1)  被告会社以外の被告らは、共同して右2の行為を行ったので、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。

右被告らは、被告高田と同幸平が企図した計画に従って、役割分担を定め、右2の行為を相互に協力しながら継続的かつ一貫して行ったので、右被告らの行為は全体として一個の行為と評価すべきであり、右行為によって原告が被った損害すべてについて共同不法行為責任を負う。

(2)  被告稲垣の主張に対して

被告稲垣が本件カードの変造、使用等に関与しておらず、原告の損害が被告稲垣の予想を上回っていたとしても、右変造、使用等は、被告稲垣による本件変造機の提供なくしては行い得なかったのであり、しかも、本件変造機が故障するたびに性能のよいカード変造機を提供し続けたのであるから、被告稲垣の行為は原告の損害の拡大に強く関与しており、被告稲垣は原告の全損害について被告高田らと同様の共同不法行為責任を負う。

4  損害

(一) 変造カードの使用合計額 二億九四〇五万三〇〇〇円

本件システムの加盟店においては、通常、本件カードの券売額と消費額は概ね均衡し、消費額が券売額を大幅に上回る原因は、偽造、変造されたカードの使用以外には考えられないところ、本件各店舗において、変造カードが使用された期間において、合計二億八六五九万四〇〇〇円が消費過剰となった。

加えて、長地店において、変造カードが使用される以前、本件カードの消費額はその券売額と比較して平均〇・二七パーセント少なかったことから、本件各店舗においては、顧客が購入した本件カードのうち〇・二七パーセント相当額を消費せずに退蔵していたことが推認される。被告らが変造カードを使用していた期間中の券売額は合計二七億六二七七万円であるから、右金額の〇・二七パーセント相当額、すなわち、七四五万九〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨て)分の真正なカードが顧客により退蔵されていたはずであるので、変造カードの消費額を算出するには、右退蔵額七四五万九〇〇〇円を加える必要がある。

よって、本件各店舗において使用された変造カードの合計額は、合計二億九四〇五万三〇〇〇円である。

(二) 支払留保額 三八六六万五三五九円

原告は、被告会社からの請求金額のうち、平成八年一二月二二日以降分の合計三八六六万五三五九円の支払を留保したので、右同額の損害を免れた。

(三) 賠償金の支払

原告は、被告高田、同伊藤、米田、桂子、中島、田中、都築らから、合計一一〇八万円の損害賠償金の支払を受けた。

原告は、別紙一記載のとおり、右支払金を平成七年二月一八日の共同不法行為時から本件損害賠償請求債権について継続的に発生している民法所定の年五パーセントの割合による遅延損害金の支払に充当した。

(四) 以上によれば、原告の被った損害は、(一)の変造カードの使用合計額から(二)の支払留保額を控除すると、二億五〇〇〇万円を下回らない。

5  よって、原告は、被告会社に対し、債務不履行に基づき、損害賠償請求債権の内金二億五〇〇〇万円及びこれに対する債務不履行の日である平成八年二月八日から支払済みまで約定の年一四パーセントの割合による遅延損害金の支払を、その余の被告ら各自に対し、不法行為に基づき、損害賠償請求債権の内金二億五〇〇〇万円及びこれに対する不法行為の日である右同日から支払済みまで民法所定の年五パーセントの割合による遅延損害金の支払をそれぞれ求める。

三  被告文雄、同幸平及び同芳幸の主張

1  被告文雄、同幸平及び同芳幸(以下、同被告らを合わせて「被告文雄ら」という。)は、被告高田らのした不法行為に何ら関与しておらず、同被告らの刑事事件が発覚して初めて本件カードの変造、行使等の事実を知るに至ったのであり、被告文雄らが、被告高田ら本件各店舗の従業員らと共謀して本件カードを変造し、使用したことはない。

また、本件各店舗において、従業員が本件カードを変造し、使用したことについて、被告文雄らには何ら過失はない。

したがって、被告文雄らは、不法行為責任を負わない。

2  原告主張の損害は、否認ないし争う。

四  被告高田の主張

1  原告主張の被告高田の不法行為は、認める。

2  原告主張の損害は、知らない。

五  被告稲垣の主張

1  被告稲垣が原告に対し、不法行為責任を負うことは認めるが、右不法行為責任の範囲は争う。

2  被告稲垣の関与の態様

被告稲垣が、同高田の依頼により、本件変造機を調達して同被告に引き渡し、その後数回にわたって本件変造機を交換するために同被告の下に持参したことは認めるが、被告稲垣は本件変造機の売買及び交換を仲介したにすぎない。被告稲垣は、右引渡しの際、本件変造機に添付されていた使用説明書を被告高田に渡すとともに、本件変造機の入手先で聞いた簡単な取扱いの説明を行ったにすぎない。また、被告稲垣は、右引渡しについて本件変造機の調達元から五〇万円を受領したが、これは、本件変造機の代金八〇〇万円を右調達元に届けたときに、調達元が自ら渡したものであり、被告稲垣は受動的な立場で受領したにすぎない。

被告稲垣は、本件カードの変造行為及び原告に対する詐欺行為に全く関与しておらず、カード変造及び詐欺行為に基づく利益の分配も受けていない。また、被告稲垣は、最後に本件変造機を交換して調達元に持参した際に、初めて調達元から多量のカード変造の事実を知らされたものであり、それまでは、被告高田らによるカード変造の規模について、これほどのものとは予想していなかった。

3  被告稲垣の責任

被告稲垣が他の被告らと共同不法行為責任を負うとしても、被告稲垣の本件不法行為及び結果に対する関与の度合は小さいので、その関与の度合に応じた範囲でのみ責任を負うというべきである。

4  原告主張の損害は、不知ないし争う。

六  被告伊藤の主張

1  原告主張の被告伊藤の不法行為は、認める。

2  原告主張の損害は、知らない。

七  被告小澤の主張

1  被告小澤が変造カードを行使したことは、認める。

2  原告主張の被告小澤の不法行為責任は、争う。

3  原告主張の損害は、知らない。

八  被告会社の主張

1  原告主張の被告会社の債務不履行責任は、争う。

2  原告主張の損害は、否認ないし争う。

九  争点

1  被告文雄、同幸平及び同芳幸の不法行為責任の有無

2  被告稲垣の不法行為責任の範囲

3  被告小澤の不法行為責任の有無

4  被告会社の債務不履行責任の有無

5  原告の損害額

第三争点に対する判断

一  前記前提事実に加えて、証拠(甲一ないし四六、丁一、二(以上、枝番を含む。)、証人大久保幹雄、同樋口昌男、被告高田修詞、同守矢文雄、同守矢幸平、同守矢芳幸、同稲垣幸弘、検証)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

1  本件システムの仕組み、本件加盟店契約の締結、本件各店舖への本件システムの導入等は、前提事実2ないし4のとおりである。

2  本件各店舗における業務形態等

(一) 被告文雄は、本件各店舗の経理一般及び岡谷店の売上げの管理を行っていた。

被告幸平は、被告会社の営業を中心的に行い、諏訪インター店開店前は長地店及び岡谷店の売上げの管理を、諏訪インター店開店後は同店の売上げの管理をそれぞれ担当していた。

被告芳幸は、諏訪インター店開店前は塩尻店の売上げの管理を、諏訪インター店開店後は塩尻店及び長地店の売上げの管理をそれぞれ担当していた。

(二) 本件各店舗には、ホールコンピューターという名称のコンピューターが設置され、券売機による本件カードの売上額、本件カードの消費額及び現金による玉貸しの売上額、品玉数、品玉率等の情報を管理していた。

また、本件各店舗には、顧客がパチンコ玉を景品に交換する際に玉数を数えるための機械(以下「ジェットカウンター」という。)が設置され、ジェットカウンターに通された玉数及びその時間帯が、ホールコンピューターに記録される仕組みとなっていた。

(三) 売上実績表及び日計表の作成

(1)  売上実績表

被告文雄は、被告各店舗について売上実績表という名称の表(以下「売上実績表」という。)を作成していた。売上実績表には、本件各店舗における毎日の売上額、景品の買入額、これらの差額である荒利、顧客による本件カードの消費額(以下「消費額」という。)、本件カードの顧客への売上額(以下「券売額」という。)、消費額と券売額の差額等が記載されていた。

(2)  日計表

本件各店舗においては、日計表という名称の表(以下「日計表」という。)が作成されており、被告文雄らは、ほぼ毎日、それぞれの担当する店舗の日計表の内容を確認していた。

日計表は、景品の入出庫数等が記載されるものであったが、ジェットカウンターのデータが添付されており、右データには、ジェットカウンターに通された一時間ごと(ただし、午前零時から午前一〇時までの間は一括される。)の玉数が記録された。

(3)  売上実績表及び日計表の記録は、ホールコンピュータのデータを書き写す方法によって記載された。

(四) 本件各店舗における貸玉の換金率、景品の交換方法等

(1)  長地店、岡谷店及び諏訪インター店の顧客が利用していた景品交換所は被告文雄らの親族によって、塩尻店の景品交換所は被告文雄の友人によって、それぞれ経営されていた。

(2)  本件各店舗において、パチンコ玉のタバコ、チョコレート等の景品への交換率は一玉当たり四円であったが、景品交換所において換金することができる特殊景品への交換率は一玉当たり二円五〇銭であったため、貸玉の換金率は〇・六二五であった。すなわち、顧客が、貸玉を換金する場合には、本件各店舗は一玉当たり一円五〇銭の利益を得ることになっていた。

したがって、例えば、一万円分の変造カードが使用された場合には、変造カードを使用した者は二五〇〇発の玉を借り、これを特殊景品に交換して換金することによって六二五〇円の現金を取得することができる。他方、右の場合、本件各店舗は、原告に対し、消費されたカード相当額(一万円)の支払を請求することができるため、特殊景品代金六二五〇円が経費として控除された結果、三七五〇円の利益を得ることになる。

3  本件変造機の入手に至る経緯

(一) 被告幸平及び同高田は、平成六年一〇月ころ、本件カードを変造して使用することによって、利益を得ることを企てた。

(二) 被告高田は、平成六年一〇月ごろ、同幸平同席の下で、被告稲垣に電話を架け、カード変造機の入手を依頼した。被告稲垣は、平成六年一一月から同年一二月ころ、カード変造機の入手の目途が付いたため、被告高田に対し、カード変造機の調達が可能であること、代金が八〇〇万円であることを伝えた。

被告幸平は、本件変造機の購入代金に充てるため、八〇〇万円を銀行から借り入れるなどして調達し、被告高田に渡した。被告稲垣は、平成七年一月末から二月初めころ、本件変造機を長地店に持参し、代金八〇〇万円と引換えに被告高田に本件変造機を引き渡し、その使用方法を説明した。

被告稲垣は、本件変造機の入手先に右代金八〇〇万円を渡し、その際、右入手先から報酬として五〇万円の支払を受けた。

(三) 本件変造機は、使用済みであることを表す本件カードのパンチ穴をパンチくずで埋めたものに、同券種の未使用カードの磁気情報を複写することができるものであった。したがって、本件変造機によって作成された変造カードは、真正な未使用カードと同一の磁気情報が記録されているため、本件各店舗の玉貸機において真正なカードと同様に使用し、玉を借りることができるものであった。

4  本件カードの変造、使用等

(一) 被告らが、本件各店舗において、玉貸機について変造カードを使用した時期は、左記のとおりである(以下、左記期間を合わせて「本件変造期間」という。)。

(1)  長地店 平成七年四月九日から平成八年二月八日まで

(2)  岡谷店 平成七年二月一八日から平成八年二月八日まで

(3)  塩尻店 平成七年二月二八日から同年九月一七日まで

(4)  諏訪インター店 平成七年一二月一六日から平成八年二月八日まで

(二) 被告高田は、右3のとおり被告幸平と本件カードの変造、使用等について合意した上で、本件各店舗の従業員に対して、本件変造機を使用して変造カードを作成し、それを使用して玉貸機から玉を出し、出した玉を換金することを指示した。

右指示の下で、本件各店舗の従業員らは、本件変造期間において、本件各店舗の営業時間が終了した後に、使用済みのパンチ穴の空いた本件カード及びパンチくずを集め、右カードのパンチ穴をパンチくずで埋め、本件変造機を使用して未使用カードの情報を入力して本件カードを変造し、変造カードを使用して玉貸機から玉を出し、ジェットカウンターで玉数を数え、特殊景品に交換し、景品交換所で換金した。そのため、日計表添付のジェットカウンターのデータには、営業時間外である午前零時以降の時間帯に玉がジェットカウンターで計数された記録が認められる。

(三) 右のとおり、変造カードが玉貸機に使用されたことによって、本件各店舖のコンピューターには、右使用に係る本件カードの消費額が計上された。右情報は、真正なカードの消費額の情報と同様に原告のホストコンピューターに送信されたため、原告は、被告会社に対して、右消費額相当分の金員を支払った(ただし、原告が、右消費額相当分の一部について、支払を留保したことは、後記7のとおりである。)。

(四) 被告伊藤の関与態様

被告伊藤は、当初、岡谷店の従業員であったが、平成七年一二月一二日に開店した諏訪インター店の主任として同店に移動し、それ以降、被告高田の指示を受けて、同店において、本件カードを変造し、変造カードを使用して玉貸機から玉を出し、出玉を特殊景品へ交換する作業を行った。

(五) 被告小澤の関与態様

被告小澤は、長地店の副主任であったが、都築及び田中とともに、平成七年秋ころから、同店において、変造カードを使用して玉貸機から玉を出し、出玉を特殊景品に交換する作業を行った。

(六) 被告文雄の関与態様

被告文雄は、平成七年二月下旬ごろ、岡谷店の店長であった中嶋が景品交換所で特殊景品を換金していることについて右景品交換所から苦情が出たことなどから、岡谷店において変造カードが使用されていることを知り、被告幸平らから本件カードの変造、使用の事実の説明を受け、それ以降、本件各店舗における本件カードの変造、変造カードの使用の事実を知りながら、これを容認した。

(七) 被告芳幸の関与態様

被告芳幸は、平成七年三月ころ、被告高田に対し、長地店及び塩尻店において、本件カードの券売額より消費額の方が多くなったことなどから、右各店において変造カードの使用が行われていることを知り、又は被告幸平らから変造カードの作成、使用の事実の説明を受けるなどして、本件各店舗における変造カードの作成、使用の事実を知り、それ以降、これを容認した。

(八) 被告稲垣の関与形態

被告稲垣は、本件変造機を引き渡した後、本件変造機に不備があることが判明したり、本件変造機の部品が摩耗したりしたため、四回にわたって新しいカード変造機を被告高田の下に持参し、交換した。被告稲垣は、右交換に際し、小型化し、又は変造したカードを使用することができる時間が長くなるなどより性能が高いカード変造機を提供した。

被告幸平は、被告稲垣から本件変造機の引渡しを受ける際に、二、三回立ち会った。

被告稲垣は、同高田らが、本件変造機を使用して本件カードを変造し、本件各店舗で変造カードを使用していることを認識し、加えて、本件変造機の部品が摩耗していることから、多量の本件カードの変造、使用等が行われていることを認識していた。

被告高田は、同稲垣に対し、新しい本件変造機を受領する際に、交通費、手間賃等として一〇万円程度を支払った。

5  本件カードの券売額と消費額の差額の発生等

長地店については平成六年四月から平成八年二月まで、岡谷店については平成六年一一月から平成八年二月まで、塩尻店については平成六年一二月から平成八年二月まで、諏訪インター店については平成七年一二月から平成八年二月までの間における、本件カードの券売額と消費額の差額は、別紙二記載のとおりであるところ、本件変造期間中、本件各店舗において発生した券売額と消費額の差額は合計二億八六五九万四〇〇〇円、券売額は合計二七億六二七七万円である。

また、長地店における平成五年七月から平成八年二月までの間の、本件カードの券売額、消費額、これらの差額及び差額比率は、別紙三記載のとおりであり、同店では、変造カード使用前である平成五年七月から平成七年四月八日までの間において、本件カードの消費額は、その券売額に比べて、平均して〇・二七パーセント少ない状態にあった。

6  事件発覚後の経緯

(一) 平成八年二月八日午前零時から午前一時ころ、変造カードを使用していた米田、中嶋らの本件各店舗の従業員は、長野県警察司法警察員によって逮捕された。

(二) 被告幸平、同芳幸及び同高田は、平成八年二月九日、諏訪インター店において、樋口昌男ら同席の下で、右逮捕等に対する今後の対応策について協議した。その際、被告高田が自分がすべて責任を持ち、被告文雄や同幸平に迷惑をかけないかわりに、自分や逮捕された本件各店舗の従業員について弁護士を選任し、また、刑事手続が終わった後に生活を保障してほしい旨申し述べ、被告幸平及び同芳幸は了解した。

7  原告は、被告会社に対する精算金のうち、平成七年一二月二二日以降分である合計三八六六万五三五九円の支払を留保した。

8  原告は、被害弁償として、被告高田から九〇〇万円、中嶋から五〇万円、米田から六〇万円、桂子から五八万円、田中から二〇万円、都築から一〇万円、被告伊藤から一〇万円の合計金一一〇八万円の支払を受けた。

原告は、右支払に係る金員を、別紙一記載のとおり、原告の不法行為に基づく本件損害賠償請求債権についての平成八年二月八日から同年九月一日までの民法所定の年五パーセントの割合による遅延損害金の支払債務に充当した。

9  顧客による本件カードの使用態様

パチンコ店の顧客の多くは券売機を通じて購入した玉借り用のプリペイドカードを購入当日に使い切り、一部の顧客が使い切らなかったカードを持ち帰るため、券売額と消費額は概ね均衡するか、又は券売額が消費額を若干上回るのが通常である。また、一般に、パチンコ店の顧客が購入した本件カードのうち、使い切らずに手元に所持している比率(以下「退蔵率」という。)は、券売額の約〇・一五から約〇・二パーセントである。

10  原告との間で加盟店契約を締結しているパチンコ店のうち、原告に対して店ぐるみで本件カードの変造、使用等を行っていることが発覚したのは、被告会社が初めてであった。

平成七年一二月、原告に対し、本件各店舗において、本件カードの変造、使用等が行われているとの内容の匿名の電話があった。原告が、警察に通報したところ、原告は、警察から捜査の妨げをしないように指示されたため、警察によって本件各店舗の従業員が逮捕されるまでの間、被告会社との取引を継続した。

11  被告文雄らの主張に対して

(一) 被告文雄らは、同被告らの本件カードの変造、使用等への関与を否認し、本件各店舗の従業員らが逮捕されるまで、右従業員らが本件各店舗において本件カードを変造、使用していたことを知らなかった旨主張し、各本人尋問においても、本件各店舗において、本件カードの販売額と消費額に差が生じていたことを認識していたが、これは顧客が他店から同種のプリペイドカードを持ち込んだためであると考えていた、日計表に添付されていたジェットカウンターのデータを見ておらず、深夜にジェットカウンターに玉が通されたことに気付かなかったなどと、右主張に沿う供述をする。

(二) しかし、前記認定のとおり、本件カードの券売額と消費額は概ね均衡するか券売額が消費額を若干上回るのが通常であり、長地店においても、変造カードの使用以前は、本件カードの券売額と消費額の差は概ね一パーセント以下であった。そして、本件各店舗において、変造カードの使用が開始された日以降、券売額と消費額の差額がそれ以前と比べて明らかに増加し、例えば、長地店において右差額は多いときには一〇パーセントを超え、しかも、塩尻店においては、変造カードの使用が行われなくなった日以降、右差額が明らかに減少したことが認められる。右各事実から、券売額と消費額との間に差額が発生していたことを認識していたにもかかわらず、右差額が顧客が他のパチンコ店で購入したプリペイドカードを持ち込んだために発生したと思っていたという被告文雄らの供述は、にわかに信じ難い。

また、被告文雄らは、概ね毎日、担当する店舗の売上げの管理者として日計表の内容を確認していたところ、本件変造期間中、日計表には午前零時以降に多数の玉が通されたことが記録されていたこと、被告文雄らは、売上実績表及び日計表に情報を記載するに当たって、ホールコンピュータのデータを書き写していたところ、ホールコンピューターにはジェットカウンターに通された玉数及びその時間帯が記録される仕組みとなっていたことなどから、日計表添付のジェットカウンターのデータは見ておらず、深夜にジェットカウンターに玉が通されたことに気付かなかったとの被告文雄らの供述も、たやすく信じることはできない。

また、前記認定のとおり、本件各店舗に併設されている景品交換所は被告文雄の親族及び友人によって経営されていたこと、右景品交換所関係者から被告文雄らに対し本件各店舗の従業員が景品交換所において特殊景品の換金を行っていることについて苦情が申し出られたにもかかわらず、これを放置して、約一年間にわたって右交換が継続的に行われたことが認められるところ、右各事実は被告文雄らの本件カードの変造、使用等への関与を強く推認させるものである。

さらに、平成八年二月九日における被告幸平、同高田らの話合いの経緯についての証人樋口昌男の証言は、具体的かつ詳細であり、また、同証人がいわば第三者的立場にあることから、信用性が高いと認められるところ、右話合いの経緯からしても、被告文雄らが、本件各店舗における本件カードの変造、使用等を知り、これを了解していたことを推認することができる。

また、被告高田が、同稲垣に対し本件変造機の入手を依頼している際に、被告幸平が同席しており、また、同被告は本件変造機の受渡しにも数回立ち会っていたとの被告高田及び同稲垣の各供述も、互いに一致し、信用するに足りるということができる。

(三) 以上によれば、前記認定事実に反する被告文雄らの供述は、信用することができない。

二  争点1について

1  前記認定事実によれば、被告幸平が、本件カードの変造、使用等に、当初から積極的に荷担し、また、被告文雄及び同芳幸が、右変造、使用等を事後的に知り、これを容認していたことが認められる。

これに対し、被告文雄らは本件各店舗の従業員が本件カードを変造して使用したことについて何ら関与しておらず、従業員らの右行為について何ら過失はない旨主張するが、右主張を採用することができないことは、前記判示のとおりである。

2  したがって、被告文雄らは、本件各店舗の従業員らと共謀の上、本件カードを変造して、玉貸機に使用し、右使用分に係る変造カードの消費額を計上し、原告に、被告会社に対して右消費額相当分の金員を支払わせたものである。右は、原告に対する不法行為を構成するので、被告文雄らは、不法行為に基づき、本件各店舗における本件カードの変造、使用等により原告が被った損害を賠償すべき責任を負う。

三  争点2について

1  被告稲垣は、同被告は本件変造機の売買及び交換を仲介したにすぎず、本件カードの変造及び原告に対する詐欺行為に全く関与していないし、これに基づく利益の分配も受けておらず、カード変造の規模も予想していなかったことなどから、被告稲垣の本件不法行為及び結果に対する関与の度合は小さいので、その関与の度合に応じた範囲でのみ責任を負うべきである旨主張する。

2  しかし、前記認定のとおり、被告稲垣は、同高田の依頼を受けて、本件変造機の調達先を探し出し、同被告に連絡し、本件変造機を自ら長地店に持参してその使用方法を説明し、その後も、四回にわたってより性能の高いカード変造機を被告高田らのもとに持参して交換し、また、被告稲垣は、同高田らが本件各店舗で変造カードを使用しており、本件変造機の部品が摩耗していることなどから大規模な本件カードの変造、使用が行われていることを認識していたものである。

そうすると、被告稲垣は、本件各店舗における本件カードの変造、使用等に先立ち、右変造、使用等に必要不可欠である本件変造機を調達して被告高田らに引き渡し、その使用方法を説明するなど、右変造、使用等の開始に当たって重要な役割を果たしたばかりか、その後も、本件変造機をより性能の高いものに交換するなどして、原告の損害の拡大に寄与したものであり、自ら本件カードの変造、使用等を行わなかったとしても、その関与態様は、重大なものであったといわざるを得ない。

3  また、被告稲垣は、その責任を限定すべき理由として、被告稲垣が本件各店舗におけるカード変造の規模を予測していなかったことを主張する。

しかし、被告稲垣は、本件変造機を提供することによって、変造カードが作成され、これによって原告に損害を与え得ることは当然予測することができたものであり、また、被告高田らが八〇〇万円という少額とはいえない代金を支払って本件変造機を入手したこと、被告会社の専務取締役であった被告幸平も当初から関与していたことから、店ぐるみで、本件変造機を使用して相当程度の規模においてカードの変造、使用を行うことが企図されていることが容易に想像することができたということができる。加えて、被告稲垣は、本件変造機の部品が摩耗していることなどから、大規模な本件カードの変造、使用等が行われていることを認識していたにもかかわらず、被告高田らの右変造等を放置し、さらには、右摩耗のためより性能の高い変造機を提供し続けたものであって、被告稲垣の本件不法行為及び結果に対する関与の度合が小さいものであったとは到底いい難い。

4  以上によれば、被告稲垣の右主張は採用することができない。

四  争点3について

1  被告小澤が、本件カードの変造、使用等を行っていたことは、原告と被告小澤との間で争いがない。

2  右によれぱ、被告小澤は、本件各店舗の従業員らと共謀の上、本件カードを変造して玉貸機に使用し、右使用分に係る変造カードの消費額を計上し、原告に被告会社に対して右消費額相当分の金員を支払わせたものであるから、右各行為は原告に対する不法行為を構成する。

よって、被告小澤は、不法行為に基づき、本件各店舗における本件カードの変造、使用等により原告が被った損害を賠償すべき責任を負う。

五  争点4について

1  前記認定事実によれば、原告と被告会社は、本件加盟店契約において、被告会社が、本件システムの加盟店として、本件カードの取扱いについて、本件加盟店契約の定めのほか、原告の定めるカード取扱規定、パッキーカード利用約款の規約及び約款に従い、善良なる管理者の注意義務をもって誠実に業務を行う旨合意したものであるところ、これにより、被告会社は、原告に対し、本件カードの取扱いについて善良なる管理者の注意義務をもって誠実に業務を行う義務を負っていたことが認められる。

被告会社の右義務には、被告会社が自ら変造カードを使用しないことはもちろん、その従業員が変造カードを使用しないよう監督すべき義務が含まれると解される。

2  しかるに、前記認定のとおり、被告会社の役員であった被告文雄ら及び従業員であった被告高田、同伊藤、同小澤らが、本件カードを変造して玉貸機に使用し、右使用分に係る変造カードの消費額を計上し、原告に被告会社に対して右消費額相当分の金員を支払わせたものであるから、被告会社は、本件加盟店契約における右1の義務に違反し、もって、被告に損害を被らせたということができる。

3  よって、被告会社は、原告に対し、債務不履行に基づき、本件カードの変造、使用等により原告が被った損害を賠償すべき責任を負う。

六  争点5について

1(一)  前記認定事実によれば、本件変造期間における本件カードの券売額と消費額の差額は、合計二億八六五九万四〇〇〇円であり、パチンコ店の顧客の多くが購入した本件カードを購入当日に使い切り、一部の顧客が使い切らなかったカードを持ち帰るため、券売額と消費額は概ね均衡するか、券売額が消費額を若干上回るのが通常であることから、右差額は、本件各店舗における変造カードの使用によって生じたものと推認される。

(二)  次に、長地店において、変造カードが使用される前の時期において、本件カードの消費額が券売額に比べて平均して〇・二七パーセント少なく、したがって、長地店における退蔵率が〇・二七パーセントであったことは、前記認定のとおりである。

一般に、パチンコ店における顧客の本件カードの退蔵率は、券売額の約〇・一五から〇・二パーセントであるところ、長地店における右退蔵率は、一般の割合からみても合理的範囲内にあるということができ、また、長地店においては、変造カードが使用される前に約一年九か月にわたって本件システムに基づいて営業がされていたので、本件各店舗における退蔵率を、長地店の右退蔵率と同程度であると推測することには合理性があるというべきである。

そして、前記認定のとおり、、本件変造期間中の本件各店舗における本件カードの合計販売額は二七億六二七七万円であったから、右金額の〇・二七パーセント相当額、すなわち、約七四五万九〇〇〇円(一〇〇〇円未満切捨て)分の真正な本件カードが顧客により退蔵されていたことを推認することができる。そうすると、本件各店舗から原告に送信されたデータにおいて、右金額は、消費額として計上されたので、右金額も、変造カードの使用によって原告が被った損害であるということができる。

(三)  以上によれば、本件各店舗における変造カードの使用による本件カードの消費額は、右(一)の二億八六五九万四〇〇〇円に右(二)の約七四五万九〇〇〇円を加えた合計約二億九四〇五万三〇〇〇円であることが推認される。

2  他方、原告が、被告会社に対する精算金のうち、平成七年一二月二二日以降分である合計三八六六万五三五九円の支払を留保したこと、原告が、被害弁償として支払を受けた金員を、別紙一記載のとおり、原告の不法行為に基づく本件損害賠償請求債権についての平成八年二月八日から同年九月一日までの民法所定の年五パーセントの割合による遅延損害金の支払債務に充当したことは、前記認定のとおりである。

3  以上によれば、原告が被った損害は、変造カードの使用により本件カードの消費額として計上された額(約二億九四〇五万三〇〇〇円)から、原告の被告会社に対する支払留保額(三八六六万五三五九円)を控除すると、約二億五五三八万七六四一円であり、少なくとも二億五〇〇〇万円を下回らないことが認められる(以下、原告の被った右損害を「本件損害賠償金」という。)。

七  被告らの責任

1  被告会社の責任

(一) 原告と被告会社が、相互に、本件加盟店契約に基づく金銭債務の履行を怠ったときは、年一四パーセントの割合による遅延損害金を支払う旨合意したことは、前提事実のとおりである。

(二) 被告会社は、前記判示のとおり、債務不履行に基づき、損害賠償責任を負うものであるが、債務不履行に基づく損害賠償債務は、催告によって遅滞に陥るものと解すべきであるところ、原告は、被告会社に対し、平成八年六月二七日送達の本件訴状をもって、本件カードの変造、使用等について、債務不履行に基づき、損害賠償金二億五〇〇〇万円の支払を請求した。

(三) よって、被告会社は、原告に対し、債務不履行に基づき、本件損害賠償金の内金二億五〇〇〇万円及びこれに対する右損害賠償金の支払の催告をした日の翌日である平成八年六月二八日から支払済みまで約定の年一四パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負うこととなる。

2  被告会社以外の被告らの責任

(一) 被告会社以外の被告らは、被告高田及び同幸平が企図した計画に従って、役割分担を定め、相互に協力しながら、客観的に共同して、本件カードの変造、使用等を行ったことが認められるので、右被告らは、共同不法行為に基づき、原告が被った損害を連帯して賠償すべき責任を負う。

(二) そして、不法行為に基づく損害賠償債務は、何らの催告を要することなく、成立と同時に遅滞となると解されるので、被告らの右損害賠償債務は不法行為を行った時点、すなわち遅くとも不法行為が行われた最後の日である平成八年二月八日に遅滞となったことが認められる。

(三) 他方、原告が、被害弁償として支払を受けた金員を、別紙一記載のとおり、原告の不法行為に基づく本件損害賠償請求債権についての平成八年二月八日から同年九月一日までの間の民法所定の年五パーセントの割合による遅延損害金の支払債務に充当したことは、前記認定のとおりである。

(四) よって、被告会社以外の被告らは、原告に対し、不法行為に基づき、各自二億五〇〇〇万円及びこれに対する平成八年九月二日(最終の被害弁償金が充当された日の翌日)から支払済みまで民法所定の年五パーセントの割合による遅延損害金の支払義務を負う。

3  なお、被告会社及び被告文雄らは、本件口頭弁論終結後に提出した書面において、仮に、被告会社らに何らかの損害賠償責任があるとしても、一年間にわたって本件各店舗における本件カードの消費額が券売額を上回る状態が継続していたにもかかわらず、何ら調査せず適切な措置を講じなかった原告の責任は、被告会社らの損害賠償責任の認定上当然斟酌されるべきである旨主張するので、念のため判断する。

しかしながら、前記認定のとおり、原告との間で加盟店契約を締結している多数のパチンコ店のうち、原告に対して店ぐるみで本件カードの変造、使用等を行ったことが発覚したものは、被告会社が初めてであり、また、原告は、警察から捜査の妨げをしないように指示されたため、本件各店舗の従業員が逮捕されるまでの間、被告会社との取引を継続したものである。

右各事実によれば、原告が、警察によって本件各店舗の従業員が逮捕されるまでの間、警察の捜査に協力し、被告会社との間で取引を継続して、本件カードの変造、使用等を阻止するなどの措置を採らなかったことはやむを得ないものであったというべきであるから、被告会社の債務不履行に基づく損害賠償責任及び被告文雄らの不法行為に基づく損害賠償責任の認定上、原告の過失を斟酌することは相当ではない。

八  よって、原告の請求は、右七1及び2の限りで理由があるからこれを認容し、その余は失当であるから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法六一条、六四条ただし書、六五条一項本文を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉戒修一 裁判官 伊藤繁 裁判官 星直子)

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